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【競馬場の怪談】22号厩舎の怪

YoutuberのTEKKENさんコラボを記念して競馬場の怪談2回目です。
今回はどんな怪談が聞けるのでしょうか。

【競馬場の怪談】22号厩舎の怪

地方競馬在籍の騎手や厩務員のほとんどは、今でも独身者は厩舎に寝泊まりしている人が大半なんですが、厩舎の建物はかなり老朽化していて、築50年を超えるものもざらですし、多くの人間が利用している事もあって、様々な人の想いが蓄積されていると言う噂も多く聞きます。

今回の話しは今は引退した地方競馬の元騎手から聞いた実話です。

約30年前の話しですが、ある地方競馬場の22号厩舎に、デビューしたての新人騎手が住み込むことになりました。

朝2時起きで調教を行い、10時から昼寝をし、夕方飼い葉を付けたり、厩舎回りの引き運動と言う、慣れない不規則な生活で、17歳と言う若さから、なかなな寝れない日も多く、半ば不眠症気味になっていたある日のことです…

誰も居ないはずの厩舎の二階から「カタカタ…」と言う物音が断続的にしたかと思うと、女性の声で「…け…いる…し…」と聞き取れるか聞き取れないかぐらいの、か細い声が聞こえた気がしました…

恐る恐る二階に上がってみると、真っ暗な四畳半の部屋には当然誰もおらず、その日は『気のせいだろ』と思い首をかしげながらも、下に降りて休んみました。

翌日そのことを古参の厩務員さんに話したところ、一瞬で顔色が変わり『部屋の様子』を詳しく聞いて来ました。

さすがに怖くなって『ここって昔何かあったんですか?』と聞くと、

『お前が知る事ではないし気にしなくていいよ』と言われました。

しかし…そういわれると余計怖くなって『何かあったのなら、事前に教えてて下さいよ』と半泣きになりながらもう一度聞くと、過去その厩舎に住み込みで務めていた見習い騎手の女の子が、妻子持ちの騎手と恋仲になり、それが公になった事で、無理やり引き離されてしまったそうです。

妻子持ちの騎手と恋仲になり、それが公になった事で、無理やり引き離されてしまった

その後彼女は、失意のどん底で騎手の道を諦め実家に帰ったと言う話しをしてくれました。

ただ…その部屋で何かがあった訳ではなさそうだったので、少し安心したのですが、それを何故厩務員さんが気にされていたのかが腑に落ちないまま、数カ月の時が経った、ある日…

調教が始まる前の午前1時過ぎ…
「そろそそ起きないといけないけど、まだ寒いしなぁ」と思い、起きてはいたのですが、まだ暖かい布団の中でもぞもぞとしていると、二階から「ブーン」と言う物音がしてきました。

厩舎の奥さんが来て掃除をしているのかな?と思い、何気なく二階の階段の踊り場を覗くと、二階の明かりは一切点いておらず、「ブーン、ガタゴト…」と言う機械音と、女性の「笑い声」らしき声がかすかに聞こえていたのです。

ハッと、以前厩務員さんが話されていた見習い騎手の女の子の事を思い出し、急に怖くなってしまいまいしたが、まさか幽霊が掃除してるわけないな(笑)と思いながら、思い切って二階の階段を上り、部屋の引き戸を「ガラ」っと開けたところ、暗闇の中に「何か」が動いている事が確認できました!

目が慣れるにしたがって、動いているモノが掃除機だと言う事が分かりました。

普通なら勢いよく「ブーンブーン」と音が鳴るのですが、その時は遠くで聞こえる様な音で、掃除機がゆっくりと同じ場所を動いていたんです。

その場を逃げ出したかったのですが、脚がどうしても動かず、立ったまま金縛りにあった様な状態でいると、部屋の隅から女性の声で「…一緒…いっしょだよ」と言う声が聞こえてきました。

その声は、どことなく切なく…泣きそうなか細い悲痛な叫び声にも聞こえ、恐怖よりも凄く悲しい気持ちになり、ふと気が付くと自分が涙を流していたこと驚きを隠せませんでした。

次の瞬間『いっしょにいたかったぁ…』とハッキリした女性の声が聞こえ、途端に目の前が真っ暗になりました。恐らく気を失っていたのでしょう…

「おい、大丈夫か」と言う厩務員さんの声で目が覚めましたので、夢だったのかと思いつつ、その事を話すと、青ざめた顔で、「実はその見習いだった彼女…辞めた半年後に自宅で掃除機のコードを使ってクビを吊って自決したんだよ」と、改めて当時の事を話してくれました。

後日、厩舎スタッフ総出で、この部屋は大掃除されましたが、そこに置かれていた掃除機の中から長い髪の毛が大量に出てきたので、お寺で念い入りに供養してもらったそうです。

その甲斐あってか分かりませんが、その後22号厩舎で、この怪奇現象はピタッと無くなったそうです。

19歳だった少女の切ない想いがこの部屋に残っていたのかも、知れません…