
1. 調査サマリー
| 怪奇レベル | 危険:A(近代化の犠牲による残留思念と空間の歪み) |
| 主な怪異 | 作業服姿の集団、カンテラの揺らぎ、窓ガラスに残る手形、電子機器の完全放電 |
| カテゴリー | 峠 / 隧道 / 旧道 / 産業遺構 |
| 調査完了日 | 2026年1月(協力:怪奇社・北九州/筑豊合同調査班) |
2. 歴史:金辺峠に穿たれた「文明の傷跡」
北九州市小倉南区と田川郡香春町を結ぶ大正6年(1917年)竣工のレンガ造りトンネル。
現在の新金辺トンネル上部に位置する。福岡県行橋市と田川郡香春町を隔てる峻険、大坂山(飯岳山)。この嶺を貫く「金辺隧道」は、明治期における九州鉄道敷設の最難所の一つであった。
ここは、筑豊の石炭を運ぶために流された膨大な「血と汗」が、コンクリートと岩盤の中に結晶化した場所である。
昭和42年(1967年)に新金辺トンネルが開通すると使われなくなり、現在はフェンスで通行ができなくなっている。
3. 隧道の深淵:層を成す「無念」の記憶
- 「未完の労働」に従事する影
金辺隧道の建設、および周辺の鉄道工事では、当時の過酷な労働環境により多くの犠牲者が出た。深夜、作業服に身を包んだ男たちが一列になってトンネルの壁に吸い込まれていく姿が目撃されている。彼らにとって、工事はまだ終わっていないのである。 - 「カンテラの光」と時空の混濁
夜間、トンネル内部で現代のLEDライトとは明らかに異なる、赤白く揺れる光が目撃される。これはかつての作業員が掲げていたカンテラの灯火ではないかと推測される。この光を追いかけて隧道の深部へ進むと、出口に辿り着けなくなる「方位喪失」を引き起こす。 - 拒絶のサイン:窓を叩く音
帰り道車で通過中、屋根や窓を激しく叩く音が響く。停車して確認しても周囲には誰もいない。
4. 怪奇社・実地調査レポート:深夜の境界観測
● 観測ポイント:金辺隧道(道路用旧道)入り口
深夜2時10分、懐中電灯で照らすと内部は常に地下水が滴り、反響音が異常に歪んでいる。
トンネルの内部の暗闇から「カツン、カツン」というツルハシで岩を叩くような乾燥した音が微かに聞こえ始めた。
● 特筆すべき現象:バックミラー内の「集団」
調査車両のバックミラーに、突如として数人の人影が映り込んだ。
皆、俯き加減で歩いており、先頭の男が持っているカンテラのような光が車内を赤く照らした。
驚いて直接後方を振り返ったが、そこにはただ湿った暗闇が広がるのみであった。
再びミラーに目を戻した時には、光も影も消え去っていた。
【石川代表の分析】
「旧犬鳴が『個人の激情』によるものなら、金辺隧道は**『組織的な無念』**が沈殿している場所だ。明治から昭和にかけて、この嶺を越えようとした数多のエネルギーが、トンネルという閉鎖構造によって逃げ場を失い、リプレイされ続けている。ここは生者の場所ではない。過去の記憶に引きずり込まれないよう、強い意志を持って通過する必要がある。」
5. アクセスと探索の心得
- 所在地: 福岡県北九州市小倉南区〜田川郡香春町
- 注意事項
- 路面状況の悪化に警戒
旧道は落石や倒木が多く、特に雨天後は路面が極めて滑りやすい。
物理的な事故は霊的な障り以上に現実的な脅威である。 - 鉄道遺構への不法侵入厳禁
周辺には明治期の貴重な鉄道隧道も残るが、崩落の危険が極めて高く、またJR九州の敷地や私有地に隣接している箇所がある。法を侵す行為は、守護する念を刺激する。 - 「水」への敬意
隧道内に滴る水は、山の涙とも言われる。
これを汚したり、不敬な言葉を吐いたりすることは自滅を招く。
- 路面状況の悪化に警戒
6. 地元の体験談
- 「深夜にバイクで金辺の旧道を越えようとした時、ライトの先にボロボロの作業着を着た男が立っていました。避けようとしたら、その男がフッと消えて。その直後、バイクのエンジンが焼き付いたように止まり、夜明けまで一人で峠に取り残されました。あの視線は忘れられません。」(香春町・20代男性)
- 「トンネルの中で子供の泣き声が聞こえるという噂を聞いて行きました。声は聞こえませんでしたが、車を降りて写真を撮ったら、自分の影が二つに分かれていて、片方の影だけがゆっくりとトンネルの奥へ歩いて行ったんです。怖くなってすぐ逃げました。」(行橋市・30代女性)


